夜咄茶事(Iさんの出張料理編)
二月に今シーズンの集大成として、私とW夫人のお誕生会と称して、カイユさんが夜咄茶事を杜鵑草庵で催してくださいしました。
そういえば以前も私M2号は、ニ月はお誕生会茶事と称してカイユさん、鶴田母のゴールデンコンビでのもてなしを受けています。なんと贅沢な事なのでしょうか!
前回は私が亭主役でしたが、今回はカイユさんが亭主役・鶴田母は半東で。
但し今回はお料理はIさんという出張料理家さん(女性の方)にお料理を頼んで、私は正客として招かれたつもりで挑みました。
お料理もなにが出てくるかは知らないように努めました。杜鵑草庵では普段のお稽古茶事では皆で料理も作るので、席中で何が出てくるのかは非常に楽しみな事でした。
亭主を含め、客の皆さまも各々なにかとお忙しい中、この日のためにスケジュールやお仕事を調整して集まってくださいました。
着物を持参してきた人も、初めて茶事に参加した人など、ここにこの六名(総勢九名)が集まれたというだけでも一期一会な事なのかもしれません。ほんとうにうれしいかぎりです。皆様ありがとうございました。
四時半に席入り。鶴田父の絵にクリスマスローズの花が可憐でそのまわりに小さな灯明が素敵なのでした。この小さな真鍮の器はチベットのものだそうです。この杜鵑草庵らしい”しつらい”がとても嬉しく感じました。
寄付席では皆で暖かい甘糀をいただきました。
甘みもなにもつけていないそうで、糀の甘みがそのまま生かされたやさしいお味でした。
迎付で、亭主と手燭を無言で交換して、手を清めて席入りをします。まだ日の入りはしてなく若干明るかったのですが、まぁとりあえず基本どおりに・・・。
お床のお軸は中国の書がかけられていました。
部屋を暖めるためにすでに釜の湯もたぎっていますので、夜咄ではまず「前茶」をいただきます。本来は薄茶をおもあい(まわしのみ)でいただきますが、今回は大ぶりの片口の器で点てて、湯のみ茶碗で銘々に分けてくださりました。
そして、それから初炭手前。かわいらしい磁器の香合がでてきました。お初のお道具のお目見えでした。
アンヌさんが、ポルトガルのコインブラという町の名前だと教えてくださいました。私は酉年生まれなので、それに鶏の絵が描いてある事に大変興味を持ちましたが、そのあたりの詳しい意味はわからず。
どのお料理も暖かく、熱々で美味しく、たっぷりと、お腹を満たせてもらいました。
この”熱々の料理”を席に出すということは、簡単そうで実はほんとうにほんとうに難しい事なのです。
私たちが作る預け鉢の焼き物なんかは、いつも焼いて時間が経ってしまったものを席に出すという残念な事になってしまうのですが、そんな事はなく熱々なのでした。経験豊富のIさん、さすがでございます!
そして、お部屋も暗~く和蝋燭の灯かりだけでいただきます。見てくださいな、この暗さ。
煮物碗の蓋を開けると、まずふわ~と湯気の暖かさを肌で感じ、そして視覚からではなく嗅覚でほわ~っと出汁の香りを感じる事ができます。
薄灯かりの中の、碗の彩りも素晴しく見えて風情があり、食べるとふんわりと柔らかな海老真じょに・・・感慨ひとしおでした。
主菓子はW婦人のつくられた薯よ饅頭も蒸したてを席に出してくださいました。美味しゅうございました。
今ここで一週間前の記憶をたどってこの茶事のことを記事にしてますが、なにからなにまで心づくしの”暖かい料理”の記憶が今でも心にほんわかと甦ってくるほど。五感で料理を味わうとこんなに記憶が鮮明なんですね。
この写真は水屋の蛍光灯の灯かりで撮ったものですが、お席で見たこれらのお料理は実際には数倍も美味しそうに見えてました。
ただ主客席には燭台があってわりあい明るく感じていたのですが、他のお客様のお膳はもう少し暗かったようでした。
主客気遣いなくて申し訳なかったです。火(灯かり)の演出って大事ですね~。
おしながき
向付 鮃の昆布〆 菜の花昆布〆 山葵 加減酢
飯 白米
汁 西京仕立て 里芋 結び三つ葉 溶き辛子 *替えは別
煮物椀 海老しんじょう 椎茸 小松菜 松葉ゆず 紅白結び
焼き物 鮭西京粕漬け
預鉢 鍋仕立て 鯛 蕪 鶏団子 春菊 うすくず仕立て
預鉢 かに身 独活 三つ葉 菊花 生姜土佐酢
箸洗い 塩昆布 結びのし梅
八寸 牡蠣燻製 干し柿味噌射込焼
湯次
香の物 沢庵 水菜 二十日大根味噌漬け
主菓子 薯よ饅頭 (W婦人 製)
一度中立ちをし、再び席入りします。
もう、外はすっかり暗くなって寒さも増してきています。
そして、再び席入り。床には、空気を浄化してくれるという石菖が炭にしこんであります。
濃茶、続き薄茶をいただきました。
煮えたぎった湯がこんな美味しい濃茶に・・・ほんとうにご馳走です。カイユさんのお点前もかっこよくて素敵でした~。
今回輝さん作の茶杓、「初梅」がシビレました・・・・。柿渋が染みこませてあるそうです。
茶碗は、上は萩焼きのもの、下は信楽焼きワークショップで平金さんの作の器にカイユさんが釉薬掛けを体験して焼いてくださったもの。
ここでも一会一期のお道具の取り合わせになっていました。茶道愛好家に万歳!
私たちのためにここまでいろいろ準備してくださってありがとうございます。ほんとに贅沢な時、感無量です。
薄茶を飲んでからは皆もすっかりリラックスモードになりました。
時間がどれだけたったのかも分からず、現実なのか夢の中なのか不思議な時空の中で時を過ごしたような、なんだかとても長い時間に感じました。
でも前回よりは早く終わりました。よかったよかった。
いろいろ課題も残ったが、楽しい時間を皆様一緒に過ごしていただき、ありがとうございました。
Iさんのお料理ほんとうに美味しかったです!
夜咄茶事また来季の厳冬にやりましょう。そして、われわれももっと日々精進しなければ~
素敵な夜咄茶事を想像しながら、記事を拝読しました。
「現実なのか夢の中なのか不思議な時空の中で時を過ごしたような」という表現の中に、私も身を置きたかったです。
遅ればせながら、お誕生日おめでとうございます!
素敵な年でありますように。
そして、私は月に一回はお稽古に行けるように頑張ります。
はごろもさん、ありがとうございます。
夜咄茶事は「陰翳礼賛」の言葉がしっくりきます。
着物の刺繍もそれこそ立体感が出て、素敵。
谷崎潤一郎 著 「陰翳礼賛」をぜひ読んでみてください。
お互いお稽古頑張りましょうね~!