初めてバリ島の伝統芸能ワヤン・クリットという”影絵芝居”を見にいきました。
ワヤンとは、「影」。クリットは「皮」という意味。その人形は皮でできていて複雑な透かしの彫りが施されていて、彩色もされたとてもきれいなものです。影絵なのになぜそんな彩色までされているのかと疑問に思いませんか？何故かといいますと、そのお芝居は表からと裏からと両方楽しめるようになっているからなのです。

会場はこんな感じでした。裏側にも人がいます。

人形が彩色された方からのお芝居見ると、その人形遣いの技と、ガムラン奏者たちの演奏状況もたのしめ、そして逆に影絵だけを見るほうは、シンプルにお話と音楽が楽しめるという仕組み。
どっちがいいかは、観客のお好みに応じて楽しめばいい。表も裏もなく全部見せちゃうなんて面白いですね～。私は両方みたいので、前半は表、後半は裏からと忙しく見てました。実質演目は前半後半なんてのはなく、二時間通しで上演されてました。本場でのワヤン・クリットは６時間くらい上演するのだそうだ。ほぼ一日仕事ですね。

人形遣いの人を”ダラン”といいます。”ダラン”は何十体もの人形を一人で扱い、もちろんそれぞれの人形に台詞も語らせます。その語りのほか、歌、ガムラン伴奏者や人形補佐に合図したりと一人上演しながらも何役もこなします。裏ではそんな恐ろしくいそがしい人形遣い”ダラン”の手さばきなんかも拝見できます。
この”ダラン”は文学・芸能・宗教・政治などあらゆることに精通している教養人でなくてはいけません。
今回、その”ダラン”をしていたのは日本人の梅田英春さんという人です。
これもまた驚きでした。

まずは＜梅田英春さんのプロフィール＞
日本の音楽大学在学中にバリ島でガムランとワヤンに出会い、インドネシア芸術大学でワヤンを学ぶ。
ワヤン一座のもとで、ワヤンの研究を積み。現在は沖縄県立芸術大学で民族音楽学の教授執るかたわら、日本各地でワヤン上演を行っている。のだそうだ。

本来ワヤンで上演される言葉は古ジャワ語です。現地の人でも古ジャワ語を理解できる人はわずかで、お話は道化役の人形たちが観客にわかるよう現代語で通訳しながらお話がすすんでいきます。
今回の演目はジャワ語でももちろん語っていますが、通訳役の主なセリフは日本語で上演してくれています。時々沖縄ネタや時事ネタも盛り込みながらの、とてもすばらしい上演でした。
笑いもあり、哲学あり、教えもあり、すばらしいバリの伝統芸能のワヤン・クリット。そして、ガムランの生演奏。日本にいながら、こんなエンターテイメント芸術を味わえるなんて、とても贅沢なことだと感じました。

今回の演目は「クンバカルナの戦死」でした。
長くなってしまったので、この演目のお話の続きはまた次回にします。